ムーズ川のトカゲ

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空は陰り、空気が湿り気を帯びていくのが感じられた。「ムーズ川斑紋ワニ生態保護区」と書かれた看板が、一列に並んだ鉄条網のフェンスに掛かっている。数百メートルにわたって続くそのフェンスは、何箇所か倒壊していた。保護区の中では、一大群のワニが岸から少し離れた、一、二百メートルほど先の湿地の草むらに群がっていた。川に少しでも波が立つと、ワニたちはいっせいに頭を高く持ち上げた。明らかに何かを警戒していた。

保護区内にはクリーム色のトタン造りの事務所があったが、なぜかその壁の一面がすっかり突き破られていた。まるで強大な外力が壁に打ち付けられたかのようで、アルミと鉄で組まれただけのその壁面は、アルミ缶のように脆く凹み、もう一撃で完全に内側へ崩れ落ちそうだった。破壊の跡は、奥にあるもう一つの小部屋の扉の前まで、まっすぐに続いていた。

ケビンは大口径のライフルを手に小部屋の扉から出てきた。なかなか堂々とした様子だった。一方ヒューゴは手にしたノートを絶えずめくっていた。

「保護区の担当官はどこだ?」ケビンは弾を込めていないライフルを構えたまま、あたりを見回した。

「業務日誌は数日前で止まってる。保護区を一巡してくると書いてあるが、今の様子を見ると、とっくにここを逃げ出したようだな。外にも車が見当たらない」

「一体何なんだ?超巨大なワニか?」

「もう何だっていい。本当に滅多にお目にかかれない超巨大なワニなのかもしれないが、俺が今考えてるのは、どうすれば被害者を少しでも減らせるかってことだけだ」

「いや、違いはある。少なくとも、この銃であいつを仕留められるかどうかは知っておくべきだ」

「無理だ。これは麻酔弾しか撃てない。薬の効果は成獣のゾウが八秒で眠り込んで、三十分眠り続ける程度のものだ」

「それでも、まあ多少は頼りになるってことか」

「この立入記録によると、二週間前に上流に調査チームがいたらしい」

「それで?」

「保護区の担当官は、そっちに知らせに行ったんじゃないかと思ってる」

「そう思いたいのは勝手だが、俺はそのチームも担当官も、みんな食われちまったと思うね」ケビンはタバコに火をつけて吸い始めた。「上流に行くのか?」

「危険は冒したくない。体育館に行こう。保安官に大体の事情を伝えて、許可が出ようが出まいが、州政府に民兵の支援を要請する」

「いい考えだ、そうしよう」